2018年5月22日火曜日

変な海外小説大集合! (3) 牧眞司 『世界文学ワンダーランド』

次は書評集だが、一本一本が短いのでカタログ本としても使える。

・牧眞司 (2007.3) 『世界文学ワンダーランド』. 397pp. 本の雑誌社, 東京.


装丁 : 山田英春

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著者は、「本の雑誌」でお馴染みの人だ。本の雑誌は1980年代(月刊化くらいまで)にはよく読んでいたのだが、最近は時々読むくらい。

そもそも私は、娯楽として小説を読むという習慣がほとんどない人なので、entertainment系小説の書評が中心の「本の雑誌」は飛ばすページが多い。でも、時々変な本を紹介しているページが出てくるので、そこで手が止まる。

そういったページでよく見かけたのがこの人だったなあ、とこの本を読んで、ようやく名前と文章が一致した。

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002-011 はじめに
012-015 目次
017-030 とってもよくわかる「わたしたちの文学」
031-031凡例
033-057 I 炸裂する文学(ガルシア=マルケス、バルガス=リョサ、ラブレーほか)
059-083 II 世界のなりたち・宇宙の仕組み(ボルヘス、カルヴィーノ、コルタサル、カフカほか)
085-117 III逸脱する物語・増殖する物語(チュツオーラほか)
119-139 IV 街の神秘と憂愁(ピンチョンほか)
141-165 V どこか遠くへ(ボウルズほか)
167-187 VI 異界への回路(エリアーデほか)
189-213 VII 時間と空間の冒険(カルペンティエール、エーコほか)
215-235 VIII うつろう世界・はかない現実(ブローティガンほか)
237-269 IX 青春小説/恋愛小説/官能小説(カポーティ、ヴィアンほか)
271-291 X 呪うべき世界・絶望と嘲笑あるいは唾棄(セリーヌ、倉橋由美子ほか)
293-321 XI 不条理・奇妙な味・諧謔(ミショーほか)
323-355 XII 迷宮・合わせ鏡・チャイニーズボックス(ザシダワ、安部公房ほか)
357-361 あとがき
362-367 年表
368-369 最強の文学 牧眞司が選ぶ50作品
370-371 最強のジャンル小説 牧眞司が選ぶ50作品
372-397 作品リスト

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実験的な小説で私が知っている作家は、だいたい最初の方に出てくる。いや、全部読んだことある、とは言わないが(笑)。その意味で馴染みのある世界だ。

牧さんは基本的にSF読みなのだが、この本ではSFは取り上げていない。たぶん別にSF書評集があるのだろう。Ballard、Burroughs、Lafferty、筒井なんかもいない。

しかしSFをこういう現代文学の中に散りばめると、どういう絵になるのかは興味ある。まあそれは自分でやればいいんだけど。

あと、分野を越えて、マンガ、美術、映画、音楽などとの相互作用についても興味あるところ。Burroughsのcut-upはもともと美術の世界のcollageをヒントにして始められたものだし。

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本業の宗教学者としてはよく知っていたMilcea Eliade(1907-86)を取り上げているのも興味深い。小説を書いていることは知っていたが、これまでその内容を知りたいと思ったことがなかった。幻想小説。

著者が「人類史上最高の文学者」と評しているのが意外。一度読んでみたくなったね。

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チベット人作家ザシダワ བཀྲ་ཤིས་ཟླ་བ་ bkra shis zla ba (1959-)が取り上げられているのも、意外かつうれしい。

これは中国語で書かれた幻想小説なんだが、今なら続々と訳されているチベット小説が取り上げられるかもしれない(しかもこれらは原文はチベット語で、そこから直接日本語訳されているのだ)。

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後半は知らない作家ばかり。実験的な小説とも限らないので、だんだん飽きてきたが、それにしてもこのヴォリュームは圧巻だ。いまどき書評集で、こんな分厚い本を出そうというところが、さすが本の雑誌社。

これも変な小説の大海への出港地となりうる好著。数も多いだけに、こっちの方がひっかかる小説は多いだろう。ご一読あれ。

2018年5月20日日曜日

変な海外小説大集合! (2) 木原善彦 『実験する小説たち』

今度はガチの実験小説研究書。

・木原善彦 (2017.1) 『実験する小説たち 物語るとは別の仕方で』. 262pp. 彩流社, 東京.


装幀 : 長澤均(Papier Colé)

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著者は阪大准教授。どっかで聞いた名前だと思ったら、

・木原善彦 (2006.2) 『UFOとポストモダン』(平凡社新書). 203pp. 平凡社, 東京.

の人かあ。この本も、最後やや強引なところはあるが、面白い本だった。研究史をまとめるのがうまい人ですね。

文学研究が本職だから、実験小説史をまとめるなんてのは、慣れたものだ。なるほど。

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001-002 はじめに
003-005 目次
007-024 第1章 実験小説とは メタフィクション、グラフィック、マルチメディア、文体
025-036 第2章 現代文学の起点 ジェイムズ・ジョイス 『ユリシーズ』(1922)
037-046 第3章 詩+註釈=小説 ウラジミール・ナボコフ 『青白い炎』(1962)
047-058 第4章 どの順番に読むか? フリオ・コルタサル 『石蹴り遊び』(1963)
059-068 第5章 文字の迷宮 ウォルター・アビッシュ 『アルファベット式のアフリカ』(1974)
069-071 休憩1 タイトルが(内容も)面白い小説
073-086 第6章 ト書きのない戯曲 ウィリアム・ギャディス 『JR』(1975)
087-101 第7章 2人称の小説 イタロ・カルヴィーノ 『冬の夜のひとりの旅人が』(1979)
103-115 第8章 事典からあふれる幻想 ミロラド・バヴィッチ 『ハザール事典』(1984)
117-130 第9章 実験小説に見えない実験小説 ハリー・マシューズ 『シガレット』(1987)
131-138 休憩2 小説ではないけど、興味深い試みをしている本や作家
139-146 第10章 脚注のついた超スローモーション小説 ニコルソン・ベイカー 『中二階』(1988)
147-157 第11章 逆語り小説 マーティン・エイミス 『時の矢』(1991)
159-173 第12章 独り言の群れ エヴァン・ダーラ 『失われたスクラップブック』(1995)
175-185 第13章 幽霊屋敷の探検記? マーク・Z・ダニエレブスキー 『紙葉の家』(2000)
187-202 第14章 これは小説か? デイヴィッド・マークソン 『これは小説ではない』(2001)
203-205 休憩3 個性際立つ実験小説
207-221 第15章 サンドイッチ構造 デイヴィッド・ミッチェル 『クラウド・アトラス』(2004)
223-236 第16章 ビジュアル・ライティング ジョナサン・サフラン・フォア 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(2005)
237-245 第17章 擬似小説執筆プログラム 円城塔 『これはペンです』(2011)
247-257 第18章 どちらから読むか? アリ・スミス 『両方になる』(2014)
258-260付録:さらに知りたい人のために
261-262 あとがき

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表題の作品は、見事に1冊も読んだことない(笑)。章末の「これもオススメ!」には、読んだことのある作品が結構あったけど(日本の作家では、筒井康隆が頻出するあたり満足だ)。

各章とも「手法」に主眼をおいて分類している。各章10ページ程度なのですごく読みやすいし、わかりやすい。

かといって、この中でどれだけ「よし、読んでみよう!」となるか?この本で概要を知って、満足しちゃったのが多いかもなあ。

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Burroughsのcup-up小説も、手法紹介や短い文例で見るとすごくおもしろいのだが、長編一冊をその手法でやられると、読み通すのは苦痛以外の何物でもない。

ある程度批評的、分析的な視点を持って読まないと、読破は無理だ。実験小説というやつは。

ツツイストとしては、entertainmentとしても十分楽しめる体裁も備えている筒井康隆実験小説群はやはりすごいんだな、というのが実感できた。

そういえば、筒井康隆のエッセイやブックガイド本でも、かなり実験小説が紹介されているので、ご一読を。

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私は結構こういうカタログ本が好きなんだが、さて、この本を出港地として、実験小説の大海に漕ぎ出していくかどうかは、まだわかりません。今のところBurroughsだけで精一杯だし。

2018年5月19日土曜日

変な海外小説大集合! (1) 岸本佐知子・編訳 『居心地の悪い部屋』

別blogで、ここ半年ほど、USAの小説家William S. BurroughsのCDを延々紹介しているせいもあり、Burroughs関係の本ばかり読んでいるわけですが、ご存知の通りBurroughsの小説というのは、代表作THE NAKED LUNCH(裸のランチ)をはじめとして、変なのばっかりです。

私はもともとツツイストなので、そういう変な小説にはさほど抵抗感はないのですが、『裸のランチ』だけは強烈過ぎた。いまだに通読していない。拾い読みしただけ。

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そうこうするうちに、他の前衛小説、実験小説、変な小説にも興味が出始めた。

もっとも、30年前には、やはり筒井康隆から派生して、R.A.Laffetyだの、Italo CalvinoだのGabriel Garcia-Marquezをはじめとする中南米文学を読んでいた時期もあったのだ。まあその感覚が蘇ってきたわけですな。

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ちょうどいいタイミングで出くわしたのが、これ。

・岸本佐知子・編訳 (2015.11) 『居心地の悪い部屋』(河出文庫). 193pp. 河出書房新社, 東京.
← 原版 : (2012.3) 角川書店, 東京.(ただし文庫化にあって1編入れ替えあり)


カバー・デザイン : 水戸部功

岸本さんのエッセイ3冊は、ものすごくおもしろいし、Twitterも前から眺めていた。名前を聞くと反射的に「Miranda July」と出てくるほどには知ってるつもり。美人さんだし(Miranda Julyも美人ですよね)。

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この本は、変な短編小説ばかりを翻訳して、野性時代誌上で連載したものの単行本化だ。

収録作を挙げておこう。

(01) 007-018 Brian Evenson (1994) Hébé Kills Jarry. IN : ALTMANN'S TONGUE. (ブライアン・エヴンソン 「ヘベはジャリを殺す」)
(02) 019-025 Luis Alberto Urrea (2010.11) Chametla. Tin House, serial#12. (ルイス・アルベルト・ウレア 「チャメトラ」)
(03) 027-036 Anna Kavan (1940) The Birthmark. IN : ASYLUM PIECE. (アンナ・カヴァン 「あざ」)
(04) 037-052 Paul Glennon (2010) How Did You Sleep? (ポール・グレノン 「どう眠った?」)
(05) 053-063 Brian Evenson (1994) The Father, Unblinking. IN : ALTMANN'S TONGUE. (ブライアン・エヴンソン 「父、まばたきもせず」)
(06) 065-068 Rikki Ducornet (1994) The Double. IN : THE COMPLETE BUTCHER'S TALES. (リッキー・ドゥコーネイ 「分身」)
(07) 069-081 Daniel Orozco (2011) Orientation. (ダニエル・オロズコ 「オリエンテーション」)
(08) 083-113 Lewis Robinson (2003) The Diver. IN : OFFICER FRIENDLY AND OTHER TALES. (ルイス・ロビンソン 「潜水夫 ダイバー」)
(09) 115-123 Joyce Carol Oates (2007) Hi, Howya Doin! (ジョイス・キャロル・オーツ 「やあ! やってるかい!」)
(10) 125-144 Ray Vukcevich (2001) Whisper. (レイ・ヴクサヴィッチ 「ささやき」)
(11) 145-155 Stacey Levine (1993) Cakes. IN : MY HORSE AND OTHER STORIES. (ステイシー・レヴィーン 「ケーキ」)
(12) 157-180 Ken Kalfus (1998) The Joy and Melancholy Baseball Trivia Quiz. (ケン・カルファス 「喜びと哀愁の野球トリビア・クイズ」)
(13) 181-189 編訳者あとがき
(14) 190-191 文庫版あとがき
(15) 192-193 出典

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(01)なんかはBurroughsのTHE NAKED LUNCHを思わせる妙な話。オチもよくわからんし。

(06)も、目が覚めたら自分の足が取れてた、なんていう変な話だ。しかし、その足もだんだん再生してくるばかりでなく、足からもだんだん身体ができてくる、なんて・・・。読みたくなるでしょ。

(07)は、漫談か朗読にしたらおもしろそうだ。マンガでもいいかも。

一番変な小説が(11)だ。なんか統合失調症の人の話を聞いてるみたい。「わたしは丸々となりたかった」が延々繰り返される。

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全部が実験小説とは言えないかもしれないが、訳者の言う通り、どれも「モヤモヤ」する読後感の小説ばかり。変な物好きは是非一読を。

2018年5月13日日曜日

ヨコイエミ 『カフェでカフィを 2』

2017年10月30日月曜日 高野文子の娘たち (2) ヨコイエミ 『カフェでカフィを』

で紹介した『カフェでカフィを』の2巻が登場。今回は在庫が結構あったので、出るの早かったな。

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・ヨコイエミ (2018.4) 『カフェでカフィを 2』(集英社クリエティブコミックス). 159pp. 集英社, 東京/集英社クリエイティブ, 東京.
← 初出 : Office You, 2015年11月号~2017年12月号.


デザイン : 松本哲児

前回もそうだったが、表紙の色使いいいですね。今回はパステル・グリーンが基調。色コーディネートを見ながら作ったような色使いをマンガに持ち込んだのは、実は高野文子『るきさん』なのだが、もはや一般的なことでもあるし、取り立てて高野さんの影響云々を言う必要もないでしょう。

今回はずいぶんページ数を減らしてきた(前回は191ページ)。1巻がよほど売れたようだ。「早く読みたかったでしょ?だからページ数少なくても、早めに出したんですよ」と出版社に言われているようだが、図星なのでぐうの音も出ない。

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このマンガには、前回の登場人物が次回にもちらっと現れる、という縛りを入れていたのだが、2巻ではそれはあまり強く出していない。むしろ、登場人物たちが暮らすボロアパートを、そこはかとなく絡めている。

「このボロアパートが実は!」といった大河もの的な仕掛けがあるわけではないので、まあ、それも特に気にする必要はないのだが。

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1巻の実験マンガ的な作風はおとなしめで、女性誌らしいカップルもの中心の作品が多い。前回から引き続き登場しているのは、腐れ縁の堀-佐藤コンビと残業の小田-田中コンビ。「よかったですね」としか言いようがないが(笑)。

徐々に私の興味からは離れつつあるけど、最後の「通過駅」では、絵にもストーリーにも少し実験的な試みがあって、私の好み。


同書, pp.154-155

余談だが、この前回「午後二時 ホテルのラウンジで」のアゴヒゲ男が、ゴリラおじさんの後ろにちらっと顔を出しているのに、今気づいた。探すとあるんだろうなあ。

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絵はもうヨコイエミの絵柄が確立しているので、この調子で安定して描いてくれればいいような気がする。高野風ではなくなった。

しかし、ところどころ森泉岳土とか近藤聡乃を思わせる絵柄が出てくるのがおもしろい。この人マンガ好きなんだなあ。


同書, pp.134-135

いや、マンガ家に「マンガ好き」と言うのも変だが、自分のマンガにしか興味ないというマンガ家も結構いるのだ。

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この人は、ところどころ結構えげつない性描写をぶち込んでくる人なんだが、p.41なんかは参ったなあ。こんなのマンガで見たの初めてだ。

P.76あたりもなかなかにすごい。設定を考えると、結構やばい話になってくるのだが、あんまり掘らないようにしよう(笑)。

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1巻の三爺に続いて、2巻では三婆が登場。こういう高齢者をちゃんと描けるのがこの人の強み。こういうパターンは次でも続けてほしい。

この調子で続けてくれるなら、3巻ももちろん買うぞ。出るのは2年後になりそうだが。

2018年4月7日土曜日

保谷伸 『マヤさんの夜ふかし 1~3(完結)』

2018年3月23日金曜日 やりすぎの人 小林銅蟲(1) 『めしにしましょう 1~4(続刊)』

で紹介した『めしにしましょう』を買ってきて読んでいると、ところどころ自分の記憶と一致しないのに気づいた。

あれ?なんかコタツがあったような・・・
あれ?メガネ女の方が立場が上だったような・・・
あれ?もっとジャンクフードがあったような・・・

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そう、最初は立ち読みで知ったマンガなので、『めしにしましょう』の青梅川と、『マヤさんの夜ふかし』のマヤさんがごっちゃになっていたのでした。

どちらもメガネ、黒髪ロング、前髪パッツンと、よく似てるのだ。サブキャラがマンガ家なのも似てるし。

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・保谷伸 (2016.11) 『マヤさんの夜ふかし 1』(ゼノンコミックス). 156pp. ノース・スターズ・ピクチャーズ, 武蔵野(徳間書店, 東京).
← 初出 : WEBコミックぜにょん, 2016年5月~9月.
・保谷伸 (2017.4) 『マヤさんの夜ふかし 2』(ゼノンコミックス). 157pp. ノース・スターズ・ピクチャーズ, 武蔵野(徳間書店, 東京).
← 初出 : WEBコミックぜにょん, 2016年9月~2017年2月.
・保谷伸 (2017.12) 『マヤさんの夜ふかし 3』(ゼノンコミックス). 157pp. ノース・スターズ・ピクチャーズ, 武蔵野(徳間書店, 東京).
← 初出 : WEBコミックぜにょん, 2017年3月~10月.


デザイン : ナルティス

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その中身はというと、女子二人が夜中にSkype(作中ではスカイペ)で延々雑談しているだけ。


同書1巻, pp.112-113

これでマンガが成立するのか?と思うかもしれないが、成立するんですよ。日本のマンガって、やっぱりすごい。

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雑談の話題は、夜食カップ麺、通販サイト、猫飼いたい、賃貸サイト、ゴミ出し、部屋の模様替え、スーパーのレジ待ち、髪を切らなきゃ、などなど・・・・。ホントにしょーもねーな。

一番しょーもないのは、マヤさんがメガネを忘れて外出した時のエピソード。




同書2巻, p.128 & p.126.

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そんな低テンションなマンガでも、一応盛り上がりがあったりもするのだ。


同書3巻, pp.34-35.

これは豆山クンが、応募した漫画賞に入選したところ。

「お、百合か?百合なのか?」と思ってしまうが、実は何も起きません(笑)。

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最終話では、二人で遠野へ旅行。


同書3巻, pp.122-123.

でも、やっぱり何も起きませんでしたとさ。

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マヤさんは「魔女」という設定なのだが、その設定が生かされることはほとんどない。時折、手を使わずにゴミをくず入れに入れたりするくらい。


同書1巻, p.106

でも、ごくまれに、ほうきに乗ったり、遠隔魔法で、寝落ちした豆山をベッドに寝かしつけたり、東京から仙台まで桜の花びらを送ったりする大技もこなす。

大技を使うとお腹を壊すので、滅多にやらないが。まあ「魔女」設定はほとんど忘れて読んでかまわない。

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書いていて、どうもこのマンガの面白さが伝わってるか、自信がないんだが・・・。まあいいか、自分が面白きゃ。

豆山クンかわいいし(アホ毛ありのボク女だけど)。

2018年4月1日日曜日

原田ちあき 『誰にも見つからずに泣いてる君は優しい』

2017年11月20日月曜日 『原田ちあきの挙動不審日記』

で紹介した原田ちあきの新刊が出ました。

・原田ちあき (2018.4) 『誰にも見つからずに泣いてる君は優しい』. 205pp.+2pls. 大和書房, 東京. 


ブックデザイン : 山下リサ

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すぐにヴィレッジヴァンガード(VV)に買いに行きましたよ。VVで買うと、おまけでdummy coverがついてくる。



本体を隠すためにかけても、かえって恥ずかしくなる、ふざけたカバー(笑)。

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ドギツイ配色の人なので、もう「表紙だけでダメ」ていう人も多いかもしれない。

今回はマンガではなく、イラスト+エッセイ集。この人は本来Pop Artの人なのだ。

前にも書いたように、絵には佐伯俊男、太田螢一、なんきん などの影響が見える。

そしてイラストになると、画面構成、粗いdot使い、原色ギラギラで、Andy Warhol、Roy Lichtenstein、横尾忠則あたりの仲間であることがわかる。

さっき思ったのだが、1960年代の前衛ギャグ・マンガ/アニメ作家・久里洋二あたりともちょっとセンスが近い。

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今回は、ここ数年描きためた「悪口シリーズ」の集大成。

大半はWEB上で発表済みのものだが、やっぱり紙媒体で手にすると格別だ。

ただし色はWEBで見た方が発色がいい。どっちかというと、WEB発表向きの人かもしれない。でも、現物見たことないから、わからんな。現物もいつか見てみよう。

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ここでは、WEBでは見たことなかったものを紹介してみよう。


同書, pp.22-23

サイコーですね。

主題の女の子は常に泣いている。そして恨みつらみを吐いている。主に失恋の恨みだ。泣いてもいるし、笑ってもいる、その微妙な表情が素晴らしい。

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最近では、Andy Warholが発見した「版ズラシ」の手法にも凝っているよう。勉強家だなあ。


同書, pp.74-75

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Scanして色調整をしているときに気づいたんだが、普通の図版の色調整なんて苦痛でしかないのだが、原田イラストの色調整は楽しい。

なんかハイになってくる。原色ばっかりで、気配りする要素が少ないせいもあるだろうけど。

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エッセイの方は、ほぼ自伝的な内容。文章はまだまだだけど、内容は面白い。特に、今のような原色ギトギトになったきっかけ話が、アホみたいにおもしろい。いったい何が幸いするかホントわからんもんだ。

生の感情をぶちまけたような内容も多いが、そこに怒りはない。怒りはイラストの方で発散させているから。だから、読んでいて不快感がないのだ。

うまい文章じゃないけど、マンガと一緒で、書いていくうちにどんどんうまくなりそう。たぶん文章でもイケルと思う。

そのうちに「原田ちあきの挙動不審人生相談」とかできそうだなー。

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「不器用・バカ」と自虐的な発言が多いけど、実は結構器用だし頭もいい人だ。なんでもできそう。もちろんTVもイケルぞ。

今は波が来てるから、その波に乗ってどんどん行けばいい。ただし、体にだけは気をつけてね。

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一般には、まだまだ「気持ち悪い」という評価が多いと思うけど、


同書, p.170(©タツノコプロ)

あたりからポピュラリティが広がりそう。これホントいい絵だし。

2018年3月29日木曜日

冬目景 『空電ノイズの姫君 2』 『黒鉄・改 1』

そろそろかな?とは思っていたが、2冊ほぼ同時とは意表を突かれた。

・冬目景 (2018.3) 『空電ノイズの姫君 2』(バーズコミックス). 199pp. 幻冬舎コミックス, 東京(幻冬舎, 東京).
← 初出 : 月刊コミックバーズ, 2017年7月号~2018年3月号.


cover design : Tamura Keiichiro(makena graphics)

夜祈子(右のロング黒髪の子)は、なんでこんなワルイ顔をしてるんだ?

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1巻についてはこちらをどうぞ↓

2017年4月27日木曜日 冬目景 『空電ノイズの姫君 1』 欠落だらけの物語

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1巻で注目した「欠落」については、2巻ではその欠落をあまり感じさせない。みんな、その欠落を音楽で埋めようとしているかのよう。展開は明るいので、読後感はいい。


同書, p.46

磨音ちゃんに、色んな表情、いろんなポーズをさせてるし、どれもかわいく描けている。作者が楽しんで描いているのがわかる。だから読む方も楽しい。

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この物語には、延々説教を垂れたりする暑苦しい奴や、悪役じみた登場人物がいない(今のところは)。だから安心して読んでいけるんだが、その点が物足りないという人もいるだろうな。

磨音ちゃんをはじめ、バンドメンバーは自分たちのことだけ考えてればいい状態なんだから、ある意味理想的な環境だ。まあ、社会との軋轢があまりない「ファンタジー」といえばその通りだが、放っておくとすぐに暗い展開に行きがちな姐さんにとっては、かえってこれがいい方向にころがってる。

夜祈子も音楽面で物語に絡み始めた。「いずれ×××になるんだろうな」とは、誰しも思うところだが、その過程を丁寧に描いているのでいい感じで進んでる。

しばらくは安定して楽しめそうな展開だ。

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2巻で笑ったのは、ライブハウスの店長・須藤寺(すとうじ)さん。


同書, p.92

ギャハハ、Iggy Pop ! 須藤寺←The Stoogesだし。

これ、ネット上では誰も指摘してないのな。このマンガ、音楽ファンはあんまり読んでない、と見た。というより、ジジイ+ババア(自分含む)の音楽ファンは読んでない、と言うべきか。

しかし、チョイ役にこんな気合の入った絵を与えてどうする(笑)?これじゃあ、今後「重要キャラ」に昇格させるしかないではないか。

その辺も楽しみだ。

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お次は、

・冬目景 (2018.3) 『黒鉄・改 1』(ヤングジャンプ コミックス GJ). 173pp. 集英社, 東京. 
← 初出 : グランドジャンプ, H28年23号, H29年5号/6号/8号/10号/12号/16号.


Design : Maruka-Kōbō

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「黒鉄・改」の連載開始については、こちらをどうぞ↓

2017年2月4日土曜日 冬目景 「黒鉄」 復活!

単行本が出るまで結構時間がかかった。当初毎号(隔週)掲載との話だった(信用してなかったけど)が、徐々に掲載間隔が伸びつつある。単行本での描き直しもあったんだろうな、例によって。

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こちらは比較的ゆっくりした展開。丹(まこと)が拾った密書の存在が、なんかうやむやになってるな。

連載を読んでて、ところどころ違和感があったんだが、あとがきによれば、かつての設定からかなり変えたらしい。やっぱりそうだったのか。

刀の鋼丸は迅鉄と離れてもしゃべれるようになってるし、鋼丸がいないと有象無象の悪鬼が迅鉄に取り憑いて凶悪な強さになるとか、迅鉄の仮面が外れるようになっている、とか・・・。


同書, pp.134-135

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単行本冒頭には、連載開始前に掲載された短編。これは知らなかった。スッキリまとまっていておもしろい短編だ。オチは、あんまり多用しちゃいけない強引な技を使っているが、 おもしろかったからまあいいとしよう。

あと丹は、偶然鋼丸を拾ったり、迅鉄の窮地に出くわしたり、タイミング良すぎでしょ。便利な女になってる。ちょっと不憫。

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さて、『黒鉄・改』の方は、まだ地味な展開だが、今後じわじわと盛り上がっていくのか、それとも毎度おなじみ、飽きてフェイドアウトしていくのか・・・。微妙なところだが、あまり風呂敷を広げすぎないほうがいいような気も・・・。

まあこちらも、じっくりつきあうことにしよう。

ちなみに、『黒鉄・改 2』は2018年秋ごろの予定。1巻が遅かっただけに、こっちは少し早めに出すようです。

2018年3月26日月曜日

やりすぎの人 小林銅蟲(2) 『寿司 虚空編』

・小林銅蟲 (2017.8) 『寿司 虚空編』. 223pp. 三才ブックス, 東京.
← 初出 :
裏サンデー, 2013年~2014年
http://urasunday.com/index.html
MANGA pixv, 2015/04/13+2015/10/26+2016
https://comic.pixiv.net/magazines/87


装幀 : 井上則人デザイン事務所

タイトルからして、これも料理マンガかと思いきや、数学マンガだ。それもテーマが「巨大数」!

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巨大数とは何かというと、とにかくでかい数(笑)。宇宙に存在する粒子の数よりもはるかに多い数でも、とにかく作っていこう、という試みだ。

何が目的かわからないが、すでに手段が目的化しているという暴走理論でもある。高等数学って、まあそういう学問ではあるけど。

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冒頭から、もうグラハム数が出てくる。

私は5ページ目の「↑(タワー=クヌースの矢印記号)」が3つ重なった「↑↑↑」が出てきたところでもう脱落しました(笑)。

あとは、作者の暴走ぶりを笑って楽しむのみ。

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普通、こういうマンガには、読者と物語のディープな世界をつなぐ「初心者」を主人公として置くものだが、このマンガにはそういう登場人物はいない。

ひたすら巨大数の数式を投げまくる親方(ごくたまに寿司を握る)と、その弟子マシモ、そして親方の娘うるか(の霊)、この三人の掛け合いで話は進む。マシモが比較的初心者に近いのだが、ツッコミは入れるものの、読者に寄り添う気はまるでない。

三人で読者など置いていって、暴走しっぱなし。


同書, pp.198-199

ここは珍しく料理にからめて解説しているところ。他のページはマンガの形にはなっているが、エグい数式の解説がひたすら続く、という展開。寿司関係ねーじゃん。

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同書, pp.20-21

これは数式を展開している様子だが、こんなのが10ページも続いたりするのだ。

こんなマンガなので、裏サンデーでは6回で打ち切り。まあ当然ですな。

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第6話は64ページもある。裏サンデーでの最終話。

覆面レスラー「綿花製品・アストラル・気持ち・御覧ください・仮面」が出てきて、ちょっと展開は変わる。もしかすると編集者に「あんた、いいかげんにしろ」と怒られたのかもしれない。作者がプロレス・ファンであることもわかる。

それでも、その合間には「最小超限順序数ω(オメガ)」や「FGH(急増加関数)」の解説がしっかり入る。

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ちなみに

第1話は4ページ(2の2乗)
第2話は8ページ(2の3乗)-数式展開ページを除く
第3話は16ページ(2の4乗)
第4話+第5話は32ページ(2の5乗)
第6話は64ページ(2の6乗)

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MANGA pixvに移ってからは、巨大数に疲れたのか、説明の仕方がわからなくなったのか、寿司屋の客との掛け合い、5年前に店を飛び出した元弟子マサとのロボット・バトル(笑)。


同書, pp.172-173

ほんともう、自分の好きなものを、なりふり構わず全部乗せで突っ込んできたようなマンガ。

「ついていけない・・・」と落ち込んだ読者、心配ありません。誰もついて行っていませんから(笑)。

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本屋で見かけたので、こんな本も買ってしまった。

・鈴木真治 (2016.9) 『巨大数』(岩波科学ライブラリー253). 113pp. 岩波書店, 東京. 



これは前半では、巨大数の歴史を解説。恒河沙とかアボガドロ数とかエディントン数なども出てくるので、上記のような異常な巨大数に至るまでの経緯がわかりやすい。

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『寿司 虚空編』で扱ってるような巨大数が現れるのは、後半になってからだ。

『巨大数』では後半になってやっと現れるグラハム数が、マンガでは冒頭から登場することでも、『寿司 虚空編』の異常さがわかるでしょう。

『寿司 虚空編』でしきりに出てくるアッカーマン関数は、『巨大数』ではちょっとだけ。「ふぃっしゅ数」に至っては、あとがきでちょっと触れているだけです。

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『巨大数』で扱ったのは、主に学界中心の話題だったのですが、『寿司 虚空編』で扱っているのは、アマチュア・グーゴロジスト(巨大数愛好家)が2ch(今は5ch)あたりで作り出した巨大数の話題なのです。そういうわけで両書には興味の範囲にずれがあるので、話が一致しなくても当然。

それにしても、科学啓蒙書すら置いてけぼりにするマンガが存在しうるとは・・・。いつも言ってることですが、日本のマンガの豊穣さに驚くばかり。

しかも、どうやらこれが増刷になったらしい。恐ろしや・・・。

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本屋に行ったら、フェアかなんかで、この『巨大数』が平積みされていました。それもどうかと思うが・・・、一体誰が買うんだ?(オレだった)。

それで本屋のお兄さんに「『寿司 虚空編』を隣りに置いといて下さい」と言っておきましたが(←バカ)、どうも『寿司 虚空編』の存在は知らなかったようです。

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しかし小林銅蟲って人は大丈夫かなあ。暴走しすぎだ。

この人は、水産学部出身で理系だ。なるほど、『めしにしましょう』の理詰めの料理法、『寿司 虚空編』の数学趣味にも納得。メンヘル、ひきこもりからの脱却でTVにも出てるし。

なんだか急に狂い咲きしてるんだが、その後に急落しないよう、暴走を抑えて小出しにしていくのもひとつの手。が、それができる人ならこんなマンガ描かないよな(笑)。

まあ、とにかくできるとこまでこの「濃いマンガ」を続けてほしいものです。

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(追記)@2018/03/28

なお、『寿司 虚空編』の第9話、第10話は単行本未収録で、WEBでしか読めません。

こちらでどうぞ。インタビューもおもしろいぞ。

・ピクシブ/pixvコミック > 寿司 虚空編/小林銅蟲(as of 2018/03/26)
https://comic.pixiv.net/works/1505

2018年3月24日土曜日

福岡県赤村古墳?

最初はGoogle Newsで見ました。で、元サイトに行ってみたわけです。

・西日本新聞 > ニュース >九州 >福岡 > 筑豊 > 「卑弥呼の墓では」巨大な前方後円墳?謎の丘陵 日本最大に迫る全長450メートル [福岡県](2018年03月20日 06時00分)
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_chikuhou/article/402402/

これが本当なら大発見だ。

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まず赤村の位置から


Google Mapより

福岡県の東部、田川郡に属しています。

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これがその「古墳様地形」の衛星写真。


Google Mapより

確かに、北側が円形、南側が台形の「前方後円墳」のように見えます。

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Google Earthで少し角度をつけてみましょう。


Google Earthより、南側から

西日本新聞も、他の「古墳説」を取る人の絵はだいたいこの方向、角度からのものばかりです。

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では、方向を変えたらどう見えるのか?東から見てみましょう。


Google Earthより、東側から

円形部よりも、方形部に向かってどんどん高くなっているようです。

前方後円墳で、方形部の方が高い古墳なんてあるのかな?自分はちょっと知らない。

しかも方形部は水平ではなく、円形部へ向かい傾斜している。これも古墳にしては不自然だ。

円形部の一部、民家が数軒建っているあたりは開削したのだろうか?だとすれば、ここには露頭が出ているはずだから、盛り土なのか?何か地層が出ているのか?わかるんではないだろうか?

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次に北東から見てみよう。


Google Earthより、北東側から

円形部はあまり盛り上がりが感じられない。本当の古墳ならもっとはっきりしていてほしいところ。

これは自分には「方形部からの斜面の末端」という感じに見える。

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この地形の西側が、なにか不自然に樹木がないことがとても気になる。谷間のように見えるが、それにしても低木すらないのは不自然だ。

もしかすると、この地形が古墳に見えるように、きれいに伐採したのではないか?などと考えてしまう。

見る人が古墳と感じるのは、この樹木の切れ目(の連なり)で輪郭が強調されている影響が非常に大きいだろう。

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Google Map StreetViewでも見てみよう。東側から。


Google Map StreetViewより、東側から

やはり方形部ヘ向かいどんどん高くなっていくのがわかる。

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見た目だけではなく、等高線のある地形図で見てみよう。


国土地理院地図より

・国土地理院/地理院地図(電子国土Web)(as of 2018/03/24)
http://maps.gsi.go.jp

地形図でも意外に「前方後円墳」のように見えるのでびっくり。

しかしやはり方形部の方が高い。円形部の頂部は八十数m。方形部の頂部は九十数mだ。もちろん円形部へ向かって傾斜している。

等高線には出ないが、くびれの部分に少し高まりがあるのも、古墳としては不自然。

西側の谷間は、これで見ると田んぼがあるようだ。なるほど、低木すらないのも納得。陸稲だろうか?ずいぶん狭いところに作ったもんだなー。

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地質も見ておこう。


シームレス地質図より

・国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター > 20万分の1日本シームレス地質図 > 20万分の1日本シームレス地質図を表示(as of 2018/03/24)
https://gbank.gsj.jp/seamless/seamless2015/2d/index.html?lang=en

この場所を含む一帯には、白亜紀の花崗岩が分布していることがわかる。

この場所は、花崗岩地形らしい起伏に欠けるが、だいぶ風化・削剥されているのだろう。

花崗岩は風化すると、「真砂(まさ)」というごく粗い砂~小石になる。表面には土壌がかぶっているとは思うが、少し掘ればその真砂が出てくるはずだ。

私には、この「古墳様地形」は、南側にあった花崗岩の山が徐々に風化して崩れ、真砂が北へ地すべりのように流れ落ち、末端の円形部に溜まっているように見える。

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というわけで、私の見るところでは、これは人工物ではなく自然の地形と判断しました。

マスコミの人は「古墳か?遺跡か?」と煽ったほうが商売になるので、不都合なデータはわざと出さない傾向にあります。与那国海底遺跡と同じ図式ですね。

「新聞は公器。正しい情報を書いてくれる」が迷信なのは、これでもわかりますね。こう言った案件では、マスコミの言うことは鵜呑みにせず、ある程度自力で調べる必要があるのです。

さて、本当のところはどうなんでしょうね?続報を期待しましょう。

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(追記)@2018/03/24

・国土地理院 > 地図・空中写真・地理調査 > 地図・空中写真閲覧サービス > CKU747(1975/03/15(昭50))
http://mapps.gsi.go.jp/contentsImageDisplay.do?specificationId=1057978&isDetail=false

に、1975年の航空写真があります。


地図・空中写真閲覧サービスより

当時、この地形の西側・北側は伐採されたばかりで、樹木のない状態の地形がよくわかります。

円形部、西側は思いのほか整っている。でも、川で削られた地形としては、まあおかしくない。

円形部の東側はだいぶグズグズだ。このときに伐採された木が育つ前に、人為的に改変を受けている(崩された?あるいは採石された?)ようにも見える。

決定的な証拠とまでは行かないけど、じっくり観察すればおもしろいことがわかりそうな資料です。

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(追記)@2018/03/25

今思ったのだが、もしこれが造営物だったとすると、山際のライン(前方後円墳様地形の西側)が偶然うまい具合に「前方後円墳」の輪郭だったところに、その輪郭に合わせて前方後円墳を造営したことになる。

そんなことするかな?これはやはり、自然による偶然と考えた方が理にかなっていると思う。

どっちにしても決定的な話ではないけど・・・。

2018年3月23日金曜日

やりすぎの人 小林銅蟲(1) 『めしにしましょう 1~4(続刊)』

・小林銅蟲 (2016.11) 『めしにしましょう 1』(イブニング-KC). 125pp. 講談社, 東京.
← 初出 : イブニング, 2016年13号~20号.
・小林銅蟲 (2017.2) 『めしにしましょう 2』(イブニング-KC). 126pp. 講談社, 東京.
← 初出 : イブニング, 2016年21号~2017年5号.
・小林銅蟲 (2017.7) 『めしにしましょう 3』(イブニング-KC). 126pp. 講談社, 東京.
← 初出 : イブニング, 2017年5号~13号.
・小林銅蟲 (2017.12) 『めしにしましょう 1』(イブニング-KC). 126pp. 講談社, 東京.
← 初出 : イブニング, 2017年14号~23号.


Coverdesign : Tadashi HISAMOCHI (hive&co.,ltd.)

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マンガ家・「广大脳子(まだれだいのうこ)」とそのアシスタント(のちにチーフっぽくなる)・「青梅川おめが」による密室料理マンガ。主役、すなわち料理を作るのは、メガネの青梅川の方。

もうなんかね、見てるだけで痛風になりそうな、豪華食材というか凶悪な食材ばかり・・・。松浦だるま・・・いや、广大脳子先生の健康が心配になるレベル。

リストアップしてみよう。

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1巻

・一の膳 : ローストビーフ → いきなり肉肉しいメニュー。マッシュドポテトにいきなりバター1本、丸ごと入れたりするあたりからして異常。

・二の膳 : すっぽん鍋 → 2回目でもうこれだ(笑)!广先生は、当然鼻血を出す。


同書1巻, pp.22-23

・三の膳 : 超級カツ丼 → このマンガではおなじみになる、風呂を使った低温加熱の登場だ。スマホ大のカツ切り身(笑)。

・四の膳 : 肩ロース氏 → 肉肉肉肉・・・。

・五の膳 : 肉あんかけチャーハン → 肉肉肉肉肉・・・。このチャーハンの作り方は、実は結構有名。3人目のレギュラー、アシ見習いの「馬場ヲッカ」少年が加わる(少年に見えるが、実はXX歳。なお、陰毛は剃ってる)。

・六の膳 : ブイヤベース的なもの → カエル、ザリガニ、巨大フジツボ・・・。確かにフジツボはものすごいダシが取れるのだが・・・。

・七の膳 : 絹かけ丼 → 肉から離れたかと思ったら、大量のウニ!大丈夫か?マスク・ド・編集者「ザ・ダイスケ」登場。

・八の膳 : 冷やし汁なし担々コシャリ → 今回は肉味噌が主役。「誰得?」の青梅川の下着姿が堪能できる。

・九の膳 : ハモの手まり寿司 → メスでハモをさばく。この食材選び、海原雄山なみの贅沢さ。

・十の膳 : パタン的なもの → 珍しくシンプルに、「宇宙ひも」(笑)をゆでた素「ウ゜ドン」。主役はチャーシューのつけ汁。「ウ゜」「ウ゜マーイ」の声が上がる。

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2巻

・十一の膳 : イクラの邪道丼 → またこんなだ。ホントに痛風になるぞ。4人目(?)のレギュラー、しゃべるロボット掃除機(のちに名前がつく)の登場。

・十二の膳 : キノコ・フォアグラ丼 → キノコはいいけど、フォアグラはよせ!「なんであるんですか?」「あるからです」

・十三の膳 : クジラいろいろ(前編) → 珍しく外へ。外房・和田漁港にお出かけ。ツチクジラの解体を見学しつつ、クジラ肉4kgゲット。4kg・・・。

・十四の膳 : クジラいろいろ(後編) → ようやく料理。ユッケ、「天ぷら」と「はりはり鍋」。今回は料理パート短かったな。

・十五の膳 : 牛バラ肉のコロッケ。あー、胸焼けしてきた。青梅川と广の知られざる過去の関係が明らかになる。

・十六の膳 : 大水炊き展 → 馬場少年が料理。これはうまそう。しゃべるロボット掃除機は「ゆず」と命名。このあと馬場少年と怪しい関係になっていく。

・十七の膳 : つよい鴨南蛮そば → 何が強いのかというと、ソバ3杯に鶏丸々一羽使う。肉とネギでソバが見えない状態。バカじゃないの?

・十八の膳 : 松茸すき焼き的なもの → またこんなだよ。なお、とき卵用の卵は、フォアグラと一緒に保存しておいたもの。ほんともう、いいかげんにしろよ。

・十九の膳 : カキのリゾット・レモン風味 → 呆れた。ホントもう痛風になっても知らんぞ。

・二十の膳 : 角煮クレープ → 下手に不得手な甘味方面に行こうとすると失敗する(笑)。

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3巻

・二十一の膳 : アンコウどぶ粥 → いつかは出ると思ってたが・・・。アンコウ吊るし切りのマニュアルとしても使える。なお、小さいアンコウならまな板でもさばけます。

・二十二の膳 : ガリバタステーキ・ゆずバタステーキ → ラム肩ブロックと牛ハツ。一名「キング・オブ・王」。ホントもう・・・。

・二十三の膳 : カラスミと白子のパスタ → つ・・・もう言わない・・・。

・二十四の膳 : 愚者の祭典 → ライスの横にカニ玉、ハンバーグ、その上に牛スジカレー、最後に生卵・・・。超高カロリー、「バカじゃないの?」料理だ!

・二十五の膳 : 春のロールキャベツ → 珍しくおとなしいメニューだが、中に紛れ込ませる「ふきのとう」が今回の技。確かに意外に存在感あるんだわ、ふきのとう。

・二十六の膳 : カンジャンケジャン的なもの → ワタリガニのかわりにタカアシガニを丸ごと漬け込む。失敗(笑)。雑炊化でなんとかリカバー。

・二十七の膳 : 貝の清蒸(チンジョン) → 黒ミル貝、白ミル貝、サザエを蒸して、熱々のピーナツ油をかける。うん、もう、これはうまいに決まってる。

・二十八の膳 : 低温タンしゃぶ → グロい牛タンを丸々買って来て(こっからして、もうおかしい)、スライスし、おなじみ低温加熱「しゃぶしゃぶ」だ。時間かかりそうだけど、これはホントにうまそうだな。


同書3巻, pp.90-91

・二十九の膳 : ごはん → 今回はネタがなかったか、飯炊きのウンチク。

・三十の膳 : 佛跳牆(ファッチューチョン) → 担当編集者ガルシア氏退職記念。あらゆる高級乾貨(ガンツォ=乾物)を「これでもか!」とぶち込んだ凶悪なスープ。

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4巻

・三十一の膳 : エビトマトクリーム ホットサンド → 新・担当編集者・凪無(なぎむ)登場。これはあれだ。旧作「ねぎ姉さん」だ(注)。今回は、芝エビの身はもちろん、殻のうまみも存分に使った贅沢なホットサンド。「バカじゃないのこれ」。

(注)
『ねぎ姉さん』は、こちらでどうぞ↓
・小林銅蟲/ねぎ姉さん (as of 2018/03/21)
http://negineesan.com/
もともとWEB公開作品らしいが、やっぱり本でも読みたいなあ。3分の2くらい収録した本はあるらしいが・・・。

・三十二の膳 : 中華風おろしハンバーグ → ブタ肩ロースと牛モモを合挽きにしてハンバーグに。そしてその上にナスと大量の大根おろし。また肉。

・三十三の膳 : ウツボの冷や汁 → ハモの次はウツボかよ・・・。

・三十四の膳 : 麻婆肉ミート → 豆腐の替わりに豚肉唐揚げを使う。ラー油作りから始めるあたりからして、もうどうかしてる。

・三十五の膳 : 桃地獄 → スイーツでも山盛り。やりすぎ。糖尿病も心配だ。

・三十六の膳 : いろいろな親子のかたち → 鶏むね肉を毎度おなじみの低温加熱して親子丼にしようとするが、うまくいかない。そこで・・・。

・三十七の膳 : ファイナルカレー → 水野仁輔氏のレシピを利用。カレーの決め手はやっぱりタマネギだ。味と力のない日本のタマネギではなかなか難しいので、日本でインドの味を出すのは、私はあきらめてる。

・三十八の膳 : やけくそアヒージョ → イセエビとギガマッシュ(カサの直径20cmはあろうかという巨大マッシュルーム)を使った、どうかしてる料理。

・三十九の膳 : ナープ天茶 → 趣向を変えて、オクラ、えのき茸、納豆を米粉衣で天ぷらにして、それをお茶漬けに。お茶漬けひとつにでも、こんなに手間をかける。やりすぎ。

・四十の膳 : 混沌やきそば → イカスミとソースを両方使ったイカヤキソバだ。濃い料理だなあ。しかし、よく思いついたもんだ。

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見ての通り、圧倒的に肉が多い。ボリュームあり過ぎ、高カロリーの料理ばかり。これは男の料理だ。

そう、実は青梅川は作者(男)の分身。実際、小林銅蟲は『累(かさね)』が大ヒット中の松浦だるま(なんでこんなペンネーム?)のチーフ・アシ。

だいたい、作務衣が普段着の女子などいない。小林氏の普段着が作務衣なのだ。

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本当にこんな料理いつも作ってるんだろうか?アフタヌーンは月2回刊だが、それと同じペースでこんな料理食ってたら、本当に痛風・糖尿病が心配になるレベル。

金も心配だが、これは雑誌から取材費みたいな形で、ある程度出てるんだろうな。

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それにしてもやり過ぎ感たっぷりで、読んでいるだけで胸焼けがしてくる怪作。

だが、実は小林銅蟲作品には、もっとやり過ぎマンガがある。次回はそれを紹介。

2018年3月14日水曜日

いしがきのぼる 『恐竜の飼いかた 1~2(続刊)』

新人マンガ家の作品。

・いしがきのぼる (2017.3) 『恐竜の飼いかた 1』(RYU COMICS). 165pp. 徳間書店, 東京.
← 初出 : COMIC RYU WEB, 2016年7月~12月
・いしがきのぼる (2017.10) 『恐竜の飼いかた 2』(RYU COMICS). 157pp. 徳間書店, 東京.
← 初出 : COMIC RYU WEB, 2017年2月~8月


装幀 : ストロングスタイル

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舞台はJR横浜線で、八王子と町田の間にある「町王子」(笑)。

駅からの街路は微妙に放射状だし、裏手にはもう1本線路(相模線)が走っているので、モデルは相模原のようだ。作者は、その辺に住んでいるのかな?

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学者の父は離婚して別居、母は死去。その長女・マンガ家奥村ねね子(26)と次女・フキ(16)が二人で暮らす家に、突如、腹違いの妹・よりか(10)と恐竜(!)・びわが加わる。


同書1巻, pp.48-49

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そう、これは恐竜がペットとしてフツーにいる世界のお話。その事情についての説明はないが、どうも「Jurassic Park」のように遺伝子操作で作られたような雰囲気(数十年前から始まったよう)。

ま、これはSFではなく日常ものマンガなので、設定の説明がきちんとなくても別にいいのだ。世界観は、ストーリーの流れに沿って小出しにしていけば充分。

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「姉妹だけの家に、腹違いの妹が急に同居」って、これ、吉田秋生 『海街diary』じゃないか!それよりも「やっぱり猫が好き」を目指しているらしいが・・・。この設定結構はやってるのかな・・・。

レギュラーの登場人物はその他に、

・父-冒頭にだけ登場。モンゴルに長期発掘調査に行くために「よりか」を二人の姉にあずける。よりかの母も死去、っていかにもお話だ。
・江森-フキの高校ソフトボール部のチームメイト。意外にも結構主役をはる。
・いずみ-よりかの同級生。アレルギー性鼻炎で、いつもハナをたらしている(変な設定だな~)。
・角藤-ねね子の担当編集者。一見好青年だが、実はヤバい性癖の持ち主。
・タネヤン-ねね子の中学時代の同級生。獣医。

そして

・びわ-体長2mくらいの四足歩行草食恐竜。おとなしい。「がぇ~」と鳴く。
・コスケ-奥村家のメスネコ。10才くらい。オスと思われていたが、子ネコを5匹出産。
・ダイスケ-コスケの子(他の4匹はもらわれて行った)。

といったところ。

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「びわ」をはじめとする恐竜たちは、実におとなしい。皆、おとなしい大型犬をモデルにしたような感じ。だから「恐竜で大事件が起きる」なんてこともこのマンガではない。

ホントの恐竜がどうだったかなんて誰も知らないし、このマンガでは恐竜は決して主役ではないから、いいんだけど、この辺はまあファンタジー的ですね。


同書2巻, pp.138-139

びわはpanpanyaのマンガのレギュラー・レオナルドとも似てますね(笑)。

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しっかりしてるようで抜けてるメガネ女子・ねね子、グラマラスな大女・フキ、「よい子」であることに悩みもある・よりか、意外にストーリーを動かしてくれる江森、と結構みんなキャラが立っているので、読んでいて楽しい。こういうのは飽きないです。

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絵柄は「たむらしげる」と似たあっさり系。この系統の絵も最近多いなあ(そのうちまとめて取り上げる予定)。

カラーはくっきりした色使いで、デザイン的。トロピカル調イラストで有名な永井博(大滝詠一/A LONG VACATIONの人ね)の影響がありそう。

線もカラーもデジタル作画だろう。この人の絵柄には合ってると思う。

pixvあたりに上がっている自主制作時代の絵や単発読み切りでは、それとはちょっと違った絵だ。この絵は連載用の絵なんだろうか。

他の作品も読んでみたくなりますね。短篇集も出ないかなあ。

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ほのぼのとした作風を装っているが、その中に、

・女子の下着姿
・ペド
・セフレ
・女子のトイレ・シーン
・恐竜のウンコ

など、意外にヤバイものを時々ぶっ込んで来るのが変。本性は結構ひねくれた人と見た。もっと色んな面も見たいぞ。

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この作風なら、このマンガは何巻でも読める。長く続いてほしいマンガです。

そろそろまた1冊分たまる頃だ。3巻が出るのは4月くらいかな。

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最後に、この人ネコを描くのも、ものすごくうまい。


同書1巻, pp.160-161

ネコマンガ・アンソロジーにもいずれ出てくるだろうから、それも楽しみにしていよう。

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(追記)@2018/03/16

と思ったら、次回2018/03/19更新で最終回じゃないか!

・徳間書店/月間COMIC RYU > WEB COMIC > 第1月曜日 > いしがきのぼる/恐竜の飼いかた > 第19話 気をつけよう(後編)(最終更新日3月5日)
http://www.comic-ryu.jp/_kyoryu/comic/19_02.html

残念だなあ。でも次回作も楽しみではある。

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(追記)@2018/03/24

と思ったら、2018/03/19更新分は休載=かわりにイラスト。

ここ最近の傾向だと1話=前後編だから、おそらく最終話もそうだろう。あと2回分読めるわけだな。

2018年3月8日木曜日

熊倉献の対談

2017年2月6日月曜日 熊倉献 『春と盆暗』 → 不思議ちゃん図鑑です


装丁 : 名和田耕平デザイン事務所

で紹介した新人マンガ家・熊倉献さんの対談を見つけました。

・CINRA.NET > 特集 > 黒田隆憲・インタビュー+テキスト, 豊島望・撮影, 矢島由佳子・編集/シュリスペイロフ、好きすぎる漫画『春と盆暗』の熊倉献とご対面(2017/10/06)
https://www.cinra.net/interview/201710-syurispeiloff

ロック・バンド シュリスペイロフの新譜プロモーションの一環として、ヴォーカルの宮本英一と熊倉献の対談。

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顔出しはNGですが、服装からすると結構地味~な方。だいたい想像通り。

最近何描いているのか知らないが、構想としては「熊と猟友会が戦う話」とか「椅子が交尾して増える話」なんかを考えているとか。

どうも、本人も相当な不思議ちゃんだ(笑)。

恋愛ものは、それまであまり得意ではなかったらしいのは、意外だった。

主役は宮本氏な上に、熊倉さんはおとなしい人らしく、発言は少ない。でもまあ珍しい対談で、結構おもしろかったです。

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『春と盆暗』から1年経ってしまったので、そろそろ次の作品読みたいなあ(雑誌で追っかける派ではないので)。

また変な作品集を期待してます。

2018年3月5日月曜日

『ランバーロール 0』 森泉岳土「あの日あなたと クチン2015」ほか

そういうわけで、『ランバーロール0』を見つけてきました。

・ランバーロール・編 (2017.2) 『ランバーロール0』. 111pp. ランバーロール, 出版地不明.


表紙イラスト : 森泉岳土, デザイン : セキネシンイチ制作室

006-013 (マンガ) 森泉岳土/あの日あなたと クチン2015
014-020 (小説) 滝口悠生/温み
021-021 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
022-027 (小説) 上田岳弘/かつての魔王
028-053 (マンガ) おくやまゆか/しおりしっとり
054-058 (小説) 太田靖久/ノラルンバ
059-059 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
060-067 (小説) 高橋弘希/愛と平和
068-109 (マンガ) 安永知澄/海ちゃんへの手紙
110-111 (あとがき) 安永知澄+森泉岳土+おくやまゆか

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これで、この本が年1回刊であること、主導しているのは森泉+おくやま+安永の3人であること、小説分野では今のところレギュラーはいないこと、などいろいろわかったぞ。

0号の売れ行きで、ある程度手応えをつかんだのだろう。1号は、増ページな上に、装丁もより凝った作りになった。

0号は1000円+税、01号は1200円+税。ちょっと高いと感じるかもしれないが、まあ、同人誌と思えばそんなこともない。

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・森泉岳土 (2017.2) あの日あなたと クチン2015. 『ランバーロール0』所収. pp.6-13. ランバーロール, 所在地不明. 

0号を見て、森泉の作品は「あの日あなたと」というシリーズものであることがわかった。

今回は、奥さんとマレーシアへ。内容は、なんということはない観光エッセイ。楽しそうではあるが、なるほどこれは商業誌には載らないだろう。

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今回も森泉はイラストも2枚提供。


同書, p.59

やっぱり黒い部分が多い方が森泉らしさが出る。

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・安永知澄 (2017.2) 海ちゃんへの手紙. 『ランバーロール0』所収. pp.68-109. ランバーロール, 所在地不明. 

0号では、安永作品が3分の1を占めている。これも「海ちゃんへの手紙」というシリーズものになっている。

内容は、「マッサージ店人情もの」という珍しいジャンル。これはちょっと尺を整理すれば、「ビッグコミックオリジナル」あたりで好まれそうな話だ。意外に早くメジャー誌に昇格して来るかもしれない。

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おくやま作品も、しみじみしていい。2号以降は「むかしこっぷり」を続けるのかな?

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奥付に名前が挙がっている谷口愛さん(リトルプレス「歩きながら考える」編集長)が、実質的に編集を担当しているようだ(営業も委託してる?)。

なるほど、年一回の刊行ペースといい、取り扱い書店が限定的(置いてある場所は、「歩きながら考える」も「ランバーロール」も共通している)といい、営業方針が似ている。

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というわけで、なかなかおしゃれなアート系のマンガ・小説誌なのだが、上記の3人が仲良くしてる間はまた出るだろうから、来年2月また買います。

2018年3月4日日曜日

『ランバーロール 01』 森泉岳土「あの日あなたと ヴェネツィア2016」ほか

・ランバーロール・編 (2018.2) 『ランバーロール01』. 159pp. ランバーロール, 出版地不明.


表紙画 : 森泉岳土, デザイン : セキネシンイチ制作室

という雑誌というか本を見つけました。

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表紙画は森泉岳土。相変わらず嫌味なくらいうまい、美しい。ロゴもユニーク(読めない!)。

森泉(モデルさんではない方(笑))については、これまで3度取り上げていますので、「この人の絵、何?」という人はそちらでどうぞ。

2017年10月15日日曜日 森泉岳土 『報いは報い、罰は罰』
2016年12月31日土曜日 森泉岳土 『うと そうそう』
2016年8月14日日曜日 森泉岳土5連発

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同人誌的な内容だが、ISBNがついているので、一応通常の流通ルートに乗る商業誌。雑誌コードはついていないので、本という扱い。

奥付には、版元「ランバーロール」の所在地記載がない。この辺は同人誌的。

それでも装丁はやたらと立派で、プロに依頼してるし、こっちは商業誌的、というキメラのような雑誌だ。

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内容は、マンガが5編に短編小説が4編という構成。

006-015 (マンガ) 森泉岳土/あの日あなたと ヴェネツィア2016
016-022 (小説) 戌井昭人/アライちゃん
023-023 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
024-033 (マンガ) ササキエイコ/工場
034-042 (小説) 加藤秀行/マルシェ
043-043 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
044-061 (マンガ) おくやまゆか/むかしこっぷり 塀の上の二人のはなし
062-071 (小説) ふくだももこ/カナちゃん
072-073 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
074-084 (小説) 松波太郎/5、4、3、2、1、0.9
085-085 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
087-119 (マンガ) 横山雄/彗星のこども
120- (マンガ) 安永知澄/海ちゃんへの手紙 すごいひと

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中心になっているのは誰かわからないが、森泉は表紙・巻頭だし、その他にイラストも4枚提供してるし、彼が雑誌の顔として全面的に協力しているのは間違いない。


同誌, p.43

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・森泉岳土 (2018.2) あの日あなたと ヴェネツィア2016. 『ランバーロール01』所収. pp.6-15. ランバーロール, 所在地不明. 

は、ItalyのUdineで毎年開催されているIl Far East Film Festival 18(第18回ウーディネ極東映画祭)(2016年4月)で、岳父である映画監督・大林宣彦が、Gelso d’Oro alla Carriera(生涯功労賞)を受賞した際に、一家でItaly、特にVeneziaを訪れた時の思い出を綴る小品。

内容は一見軽いが、大林監督は末期癌であることを公言しているので、実は家族にとっては大切な思い出だ。

「ああ くつろぐ」

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森泉が、大林監督の娘さんと結婚しているのは、知っている人は知っているが、知らない人も多いかもしれない。アーティストとして自立しているから、それを売りにする必要は全くないので、表に出すことはあまりない(かといって隠しているわけでもない)。

しかし、やはり大林監督の時間が少なくなっているせいもあって、最近は両者のコラボが増えてきた。『うとそうそう』の推薦シールや解説(になってなかったけど)に大林監督が登場しているし、大林監督の最新映画『花筺』のポスターも森泉だ。

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線画だけのシンプルな絵だが、「水で描いてそこに墨を垂らす」といういつもの森泉画法で描かれている。

大きく描いて、それを絵ごとにスキャナーで取り込み、画像ソフト上でコマ構成するというやり方らしいが、ここまで縮小されていると、そんな凝った画法が使われていることに気づかない人も多いだろう。

しかし、この線の妙な不均質さに「筆にしても変だ」と嗅ぎつけた人は、

・ジャパン・クリエーターズ Wannabe.jp > Illustration イラスト > Illustrator FILE 10:森泉岳土(2015年8月24日更新)
http://wannabe.jp/illustration/column/moriizumi/index.html

をどうぞ。

イラストの方は、お得意の「人物シルエット+にじみベタ塗り」が多用された森泉らしいもの。これが4枚も見れるのだから幸せだ。

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他の作者で知っているのは「おくやまゆか」だけ。これも死期の迫った父親の記憶を代筆した、いい作品だ。

ササキエイコ、横山雄は、どちらもアート系のマンガだ。森泉人脈らしい作品群。

こういった中に入ると、普通の絵柄の安永作品が居心地悪そう(笑)。

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小説の方は、いずれも文学賞を取っているような、それなりに有名な人たちらしいが、私はほとんど小説というものを読まないので、全然知らなかった。

小説はほとんど読まない、とはいえ、「ツツイスト」ではあるので、戌井作品、松波作品などには、どうしても筒井康隆の影響を見てしまう。いずれも面白い実験小説だ。

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ランバーロールは、どのようなペースで発刊されるのかわからないが、毎回森泉作品が読めるのなら、また買おうと思う。

どうも、創刊準備号である『ランバーロール 0』というのもあるらしいので、探しに行ってみる。

2018年3月3日土曜日

大沖 『はるみねーしょん 7』

2017年5月13日土曜日 大沖 『はるみねーしょん』

で紹介した『はるみねーしょん』の最新巻7巻が出ました。

・大沖 (2018.3) 『はるみねーしょん 7』(MANGA TIME KR COMICS). 119pp. 芳文社, 東京.
← 初出 : まんがタイムきららキャラット, H28年9月号~H30年2月号.


装丁 : 里見英樹

今回は帯付きで紹介します。

えー、「舞台はついにジャングルへ!自然を愛する熱帯編スタート!!」とありますが、それは表紙だけ(笑)。中身はジャングルも熱帯も全然関係ありません。テキトー。

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これまで、はるみ、ユキ、香樹の3人だけで、延々ダジャレ四コマをやってきたわけだが、この巻では、なんと登場人物が増えた。

それが「はるみ」の妹「あるみ」だ。


同書, pp.48-49

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見分けがつかないかもしれないが、あるみの特徴は、

・はるみよりも髪の毛が長い
・まつげが描かれている
・髪の分け方が逆

です。わかりにくい・・・。

しかし、性格はほとんど同じ(笑)。もちろん空も飛ぶ。

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しかし、今のところ、あるみの出番はそれほど多くない。

クラスメイトのアキ(ユキの妹)、アヤコのツッコミ力が少し足りないせいかな?二人とも普通の子だしなあ・・・。

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あと、全体にダジャレの数が激減。なんとかダジャレ抜きのギャグでこなそうとしているが、切れ味が少し鈍った感は否めない。

ペンタブのせいか、線も初期より重い感じになっているし、大沖の作風自体ちょっと変わってきている。私は前の絵のほうが好きだなあ。

まあでも、ギャグも線も親しみやすくなった、とも言える。意外とこっちの方が一般受けはいいかもしれない。

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「ひらめきはつめちゃん」、「わくわくろっこモーション」は終わってしまったが、「はるみねーしょん」の方はまだまだ続きそう。

「はるみねーしょん」の他に、現在

・大沖 (2017.10~) たのしいたのししま. 別冊少年マガジン, 2017年10月号~



を連載中。

WEBでも一部読めます。

・講談社/マガポケ > 連載作品一覧 > 木曜日 > たのしいたのししま 引っ越してきたのは島! 大沖 (as of 2018/03/02)
https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113192

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比較的低年齢向けの作りだが、「大沖作品は、子どもたちに読んでほしい」と前から思っていたので、いい方針だと思う。

こちらもぜひどうぞ。